アオリイカ釣り=「エギング」のハイシーズンがやってくる。
あのイカ独特の引きと、食べたら最高に美味い食味に魅了されるファンは多く、ハイシーズンに拘らず、年中エギングをしているエギンガーもいますよね。
しかし、近年イカの漁獲量は減少していると言われており、エギングでの釣果も、以前に比べたらパッとしない年も多くなってきていました。
それに合わせてエギングブームも十年前に比べたら衰退気味。
そんな中、アオリイカを増やそうという活動が見られるようになってきました。
そもそもアオリイカが減少してしまったのは、地球温暖化や、産卵活動に必要な海藻の減少などが原因と言われています。
それを回復させるための活動、そしてその活動の影響、結果はどうなっているのか?
近年の釣り場状況を踏まえて見ていきましょう。
三浦半島の城ヶ島で産卵するアオリイカ
神奈川県三浦半島の南端に位置する島、「城ヶ島」は 周囲長約4 km、面積0.99 km²で、神奈川県最大の自然島。
島は岩礁で囲まれ、平らな台地状地形をなし、人が立ち入れない切り立った崖になっている場所もある。
そんな自然島の城ヶ島は当然ながら魚影も濃い。
ファミリーフィッシングでも定番のイワシ類は、めざしでも良く見かけるカタクチイワシ、お刺身が最高のウルメイワシ、さらにはスーパーでもお馴染みのマイワシも釣れてきます。
となれば、それを食べるフィッシュイーターも豊富で、シーバスやイナダ、ワラサ、鰆やシイラなどが、岸壁や磯から釣れてしまうという、夢のある釣り場です。
それだけエサが豊富なため、数年前は三崎漁港内にマグロが入ってきてしまい、ボイルしまくりの大騒ぎになったこともあるんです。
マグロハンターが夢中になっていたのがとても懐かしいです。
そんな城ヶ島はタコやイカといった軟体系も豊富。
そしてアオリイカの産卵場としても有名です。
城ヶ島で生まれたアオリイカは潮の流れに乗って東京湾にやってくるため、ここでの産卵は、東京湾内の漁業にとっても重要な役割を担っています。
しかし、、、。
近年は産卵がうまく行えず、イカの漁獲量が減っているというのです…。
アオリイカの産卵
冬場、深場にいたアオリイカは、カップルとなる相方を見つけ、春になると産卵のため浅瀬へやってきます。
このタイミングが陸っぱりからアオリイカを釣る一つのタイミングになり、産卵を意識した大型のアオリイカが釣れるシーズンとなります。
そして浅瀬の海藻帯で産卵を終えると、親イカたちは再び深場へ戻り、生涯を終えます。
一方、卵から孵化した子イカたちはすくすく育ち、初秋になると300gぐらいにまで大きくなり、段々釣りとしても成立するようになってきます。
この頃がアオリイカ釣りのもう一つのタイミング、秋のハイシーズンで、アオリイカを釣る「エギ」にも好奇心旺盛なので、エギング初心者でも釣れやすいシーズンとなっています。
そしてどんどん大きくなって冬に近づいてくると、また深場へ落ちていくという繰り返しですね。
アオリイカの産卵に必要な海藻がない
さて、そんなアオリイカの産卵ですが、近年、深刻な問題を抱えています。
産卵に必要な海藻が減少しているのです。
アオリイカが産卵する場所は外敵から守れる海藻帯で、主に「アマモ」や「カジメ」といった海藻です。
城ヶ島を始めとした三浦半島一帯では、これらの海藻類がほとんどなくなってしまい、“磯焼け”、“海の砂漠化”現象といった言われ方をするほど、悲惨な状況になっているのです。
産卵礁となる海藻が減少し、産卵場がなくなるとアオリイカは産卵しません。
なんと、産卵ができないまま、卵を持ったまま死んでしまっている親イカも目撃されているといいます。
これはなんとかしないと、、、。
アオリイカの産卵に必要な海藻がなくなっている理由
“磯焼け”、“海の砂漠化”現象と言われるまで海藻が減少してしまった原因。
それはいくつか原因が言われています。
磯焼けの原因
- 地球温暖化
- ウニの大繁殖
- アイゴの増殖
磯焼けの原因は、地球温暖化による海水温の上昇や、海流の変化による貧栄養化、海洋汚染によって海が濁ることにより光が不足して、海藻の光合成作用が不活発になることなどが一因と言われています。
また、海藻を食べる生物による食害も大きな原因と言われており、ウニ被害については、三浦で海水浴をすればそれは一目瞭然。
岩礁帯にはウニがたくさん付いている光景を見ることができるでしょう。
また、アイゴも同様で、三浦半島の磯場でウキフカセ釣りをすると、メジナの外道で定番として釣れてくることから、その多さを実感することができるでしょう。
これらを何とかしないと、自然環境による海藻の回復は難しいですが、現状、画期的な対策は見い出せていないようです。
アオリイカの『人工産卵床』設置活動
こんな状況から、それでも何とかアオリイカを増やしたい。
そういった思いから、アオリイカを増やすための活動を行っているテレビ番組、企業があります。
『人工産卵床』設置活動を行う番組・企業
- 日本テレビ系「ザ!鉄腕!DASH!!」
- 株式会社「ヤマシタ」
それぞれ、山から切り出した間伐材を束ねて、人工産卵床を作り、アオリイカが本来よく産卵に来ていた場所に沈めます。
なるべく葉っぱが長持ちする木を選んで、アオリイカがいつ来ても産卵できるようにするそうです。
こうして人工的に産卵床を設置して、自然の海藻がなくなってしまった海でも、アオリイカが安心して産卵できるような取り組みを行っているのです。
日本テレビ系「ザ!鉄腕!DASH!!」鉄腕ダッシュ
日本テレビ系「ザ!鉄腕!DASH!!」では、城ヶ島に産卵床を設置してアオリイカを集め、産卵を見届け、孵化まで見守る様子が放送されました。
お母さんイカが産卵に至るまで、卵のこと、子供たちのことを考えて、慎重に慎重を重ねて安全を見極めて、それからやっと産卵をしている様子を見て感動しました。
株式会社ヤマシタ
我らエギンガーなら誰でも知っている釣具メーカー「ヤマシタ」。
三浦半島に本社を構えるYAMASHITAでは、企業活動として“アオリイカ産卵床設置プロジェクト”『アオリコミュニティ』を行っています。
ヤマシタのオフィシャル動画では、真鶴の岩、葉山等で産卵床を設置している模様を見ることができます。
アオリコミュニティ
活動の目的
- アオリイカの資源を増やす
- 活動ノウハウを各地に広め、アオリイカ釣りを継続できる環境づくりを行う
- 漁業者と協力することで、釣りに対する理解度を増やしていただく
- 活動を釣り人に広く伝え、資源を大切にする心とマナーの向上を図る
活動の内容
- 産卵床の設置を行う団体への活動支援と寄付、自社産卵床設置
※2006年より実施
「ザ!鉄腕!DASH!!」、「株式会社ヤマシタ」、どちらの番組、企業も素敵な活動ですよね!
自然環境では回復のめどが立たない中、こういった活動が続くことで生態系が守られていくんだなと、もうただただ尊敬でしかありません。
アオリイカの産卵成功!
こうして設置された“人工産卵床”。
自然の海藻とは全く違い、山から切り取ってきた木ですが、無事に産卵するのでしょうか?
すると、アオリイカは入念に木をチェックしてから産卵を行うことがわかりました。
アオリイカの人口産卵床のチェック
- メスのお母さんアオリイカは周囲を入念にチェックして安全を確かめる
- 中に入ったり出たりしてチェックする
- 卵がちゃんと引っ付くか確認する
- 木の強度は大丈夫か確認する
メスのお母さんアオリイカは、かなり入念に安全を確かめており、何度もチェックして気に入らないと産卵しないといいます。
そして、安全な場所だとわかると仲間のアオリイカが続々とやってくる。
オスとメスのペアで行動し、メスが産卵する間はずっとオスが守っていて、ペアのいない単独のオスがメスを奪いにくると追い払います。
人間と一緒で、アオリイカの世界でも色々とあるんですね。
アオリイカは産卵後に生涯を終える…。
お母さんアオリイカは全てのエネルギーを卵に注ぎ込んで産卵します。
そして産卵が終わると、夫婦で寄り添ったままその場を離れ、子供が生まれるのを見届けることなく、深場へ移動します。
そしてそのまま、、、静かに生涯を終えるといいます。
泣けてきますね、、、。
なんとも切ない話ですが、これが魂のこもったアオリイカの産卵なんですね。
アオリイカの卵は魚に襲われない
アオリイカの卵は1つ15cmほどの卵鞘(らんしょう)と呼ばれる房の中に4~10個の卵が入っています。
包んでいる房は分厚い寒天質でできており、頑丈で、波などの衝撃から卵をガードしている。
とは言っても、、、。
卵を食べてしまう魚からの攻撃は耐えられるのか?
海のギャングと言われるウツボは、タコの卵も、アオリイカも大好物だと言いますが、、、、。
と、思ったら、アオリイカの卵を包んでいる寒天質には、魚が嫌がるバクテリアが入っていると言われ、ウツボもこれは襲わないらしいんです。
ここまでしっかりお母さんの愛情が注ぎ込まれているんですね。
海のバルタン聖人「ワレカラ」がアオリイカの卵を掃除する
卵は育っていく間、房を通して海中の酸素を吸っていますが、その房が藻などによって汚れ過ぎると、海中の酸素が通らなくなり、卵が呼吸できなくて死んでしまいます。
タコの場合はお母さんダコが付きっきりで見守って、卵が孵化するまで掃除をし続けますが、アオリイカは産卵後に生涯を終えてしまうため、掃除してくる親がいない。
そうしたら、その代わりにワレカラが卵の周りに付いた藻を食べて掃除をしてくれるんですって。
これまたうまい具合にできてるんですね。
「三浦大根」人工カカシでアオリイカの卵のハッチアウトを保護
そして卵が順調に育ち、いよいよハッチアウト(孵化)を迎えようとするタイミング。
後は卵から出るだけ!
かと思いきや、、、。
このタイミングを見計らったように集まってくるのは、釣り人からよく嫌がられる魚、ネンブツダイ。
そう。
房に包まれた状態では卵を襲えなかったですが、アオリイカがハッチアウトした瞬間は、魚にとって格好の捕食のタイミングなんです。
アオリイカにとっては生まれた瞬間にいきなり生涯最大級の難関が訪れますが、ここで生き延びたアオリイカだけがその後成長することができるのです。
鉄腕ダッシュでは、地元の名産「三浦大根」を使って城島さんが作った人工カカシで周辺を防御し、ハッチアウトを手助けしていました。
こうして、人工産卵礁設置によるアオリイカの産卵は無事に成功。
こういった活動があるから、漁師さんたちの漁業も助かっているし、僕たち釣り人もアオリイカ釣りを楽しんでいけるんですね。
本当に心から感謝です!!!!
アオリイカの禁漁期間
アオリイカを増やそうという試みは、こういった人工産卵礁の設置だけでなく、そもそもイカの採捕を禁じる、禁漁期間を設けている漁協もあります。
静岡県の「いとう漁協」では、産卵期を含む一定期間はイカの採捕は禁止とし、漁業者も、そして釣り人も、イカをとることができません。
いとう漁協は直営食堂『漁師めしや 波魚波(はとば)』の経営の他、『すり身の製造販売』の新規事業をはじめました。自営定置網…
【禁止期間ならびに漁法(釣り方)】
4月1日~9月30日までの間すべての漁法を禁止。
【禁止区域】
禁止区域は下図を参照してください。
※こちらの状況は2021年9月20日現在のものです
こういった取り組みも、アオリイカの資源保護のため。
これらルールを守らないと、釣り禁止になってしまう場合もあるので注意しましょう。
アオリイカの釣果情報が続々と!
そんなこんなで、アオリイカを増やそうとしている様々な取組み。
そのおかげもあってか、三浦半島沿岸や東京湾内でも、アオリイカの姿がたくさん目撃されています。
まだまだ赤ちゃんサイズのアオリイカが多く、もしかしたら城ヶ島から入ってきたアオリイカかもしれませんね!
これからどんどん成長し、10月頭ぐらいにはエギングでも楽しめる状況になりそうな予感です!
シーズン初めは2.5号、秋深まれば3.5号がおすすめです。
エギを使ったアオリイカ釣り=「エギング」。
この秋デビューはイカがですか(笑)?
こんなイカが簡単に釣れるかもしれませんよ!!!
横浜でもアオリイカが釣れる!
そんなイカの王様「アオリイカ」ですが、城ヶ島や伊豆などへ行かなくても、横浜の岸壁でも釣れるのをご存知ですか?
10年ぐらい前のエギングブームの頃から段々と目立ってきましたが、地球温暖化が良い意味で?影響したのもあって、横浜の岸壁からでも普通に狙えるようになったアオリイカ。
特に秋シーズンには多く見られるようになりました。
意外と皆さんの身近にアオリイカはいるんですよね。
これは前述のとおり、城ヶ島等で産卵した子供たちが入ってきていると思われますが、横浜にも産卵場となる良い海藻地帯があれば、大きくなった個体も来てくれるかもしれませんね。
まとめ
ということで、今回は秋のハイシーズン目前、アオリイカについて語ってみました。
これから楽しいアオリイカ釣りシーズンとなりますが、人工産卵床のような素敵な活動を行っても、僕たち釣り人が赤ちゃんアオリイカを取りまくったら意味がありません。
大きくなれば食べられる部分は何倍にもなります。
小さすぎる赤ちゃんアオリイカはリリースしましょう!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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